「赤い羽根募金」が終わったら、「歳末助け合い募金」 が始まる・・・
私の住む佐倉市でも、自治会や町内会(以下自治会)では、年中と言っていいほど、寄付金集めをしている。毎年、年度初めに、市役所が自治会長を集めて、その寄付のお願いをしている状況は変わらない。その際に配られる自治会が集めるとしている会費・募金など「寄付金」一覧である。その要点は以下の通りである。
ご協力いただく会費・募金等一覧表
種類・納入期間 | 内容 | 使途 | 問い合わせ先 |
日本赤十字社資 5月~6月 | 社費:500円以上 寄付金:500円未満 | 災害救護・健康安全知識の普及・その他の赤十字活動 | 佐倉市社会福祉課 |
愛の一円募金 6月中旬~7月 | 法務省主唱「社会を明るくする運動」活動資金 | 街頭広報・講演・音楽会・作文コンテスト | 佐倉市社会福祉課 |
社会福祉協議会会費 4月~6月 | 社会福祉法109条に基づく「地域福祉団体」 世帯一般会費:1口500円 個人賛助:1口1000円 法人:1口10000円など | 地域福祉推進 地区社協活動ほか 法人運営事務費など | 社会福祉協議会 |
共同募金・赤い羽根 | 社会福祉法112条に基づく国民助け合い運動、目標額と市使途を事前設定 | 6割:佐倉市内 4割:県内の施設、団体、災害見舞金など | 共同募金会佐倉支会(社会福祉協議会内) |
共同募金・歳末助け合い 12月 | 要支援世帯、高齢者、児童、障害者へ支援金 |
先の自治会長たちへの説明会で手渡される「自治会・町内会・区役員の手引き」(佐倉市のホームページで閲覧できます*)によれば、日赤の募金は、どういうわけか、佐倉市と自治会との委託契約に基づく業務となっている。自治体からの文書回覧、民生委員の推薦、会員の要望の取りまとめなどと並んで、「その他市長が必要と認めた事項」に入っている。一方、そのすぐ下に「社協が行う募金は、委託業務には含まれていません」との注意書きがある。それは当然のことながら、日赤が、日本赤十字社法により厚生労働省管轄の認可による「一般社団法人」ではあるが、日赤の募金が、なぜ佐倉市が自治会に委託する業務になるのかがわからない。日本赤十字社のHPにはつぎのようなQ&Aがあったが、地域の 日赤のボランテイアの方の存在など知る由もなく、自治体を介しての自治会の集金が当たり前のごとく横行している、その由縁を説明したことにはならないだろう。
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http://www.city.sakura.lg.jp/cmsfiles/contents/0000004/4954/27jichikai.tebiki.pdf
よくあるご質問 (← 寄付する ← 日本赤十字社)
社費の募集に、なぜ町内会の人などが来るのですか?
赤十字の活動は、地域福祉やボランティア活動など地域に根ざした活動を行っており、また、災害が発生すると、自治体や地域住民の方々と協力して救護活動を展開するなど、赤十字の活動は地域と密接なかかわりを有しています。
こうした活動を支えていただくため、地域の皆さまには、社費へのご協力をお願いしているのですが、その際、赤十字ボランティアが直接お宅を訪問しお願いに伺うほか、それが困難な場合には、自治会・町内会の方々にご協力をお願いする場合があります。
また、上記の表であたかも募金の根拠規定のように記されている社会福祉法109条は、社協が会費や寄付金の募集をすることができる規定にはなっていない。社会福祉法112条は、共同募金会が募金をすることができるとはなっているが、社協との関係が不明確な上に、なぜ、自治体が、自治会の共同募金への協力を推進ないし便宜を図っているのかも不明である。社協も共同募金会も一つの「社会福祉法人」に過ぎない位置づけなのに。
寄付は個人(自治会員)の自由意思」をなぜ徹底させないのか
自治会を通して、寄付を集めること自体に法的根拠はなく、むしろ寄付の自由を阻害することがわかっていても、現在、全国のかなりの自治会で問題になっているのはなぜなのだろう。この件に関しては、昨年、私は、「私の視点・自治会と寄付金」と題して『朝日新聞』(2014年3月17日)に寄稿している。それ以前にも当ブログでは、寄付の集め方自体とその背景となっている募金の主催団体たる社会福祉協議会、日本赤十字社などの成り立ち、募金の使われ方、さらに自治体との関係など、10本近い記事で言及している。その記事へのアクセスが、年度初めと赤い羽根募金が始まる10月から年末にかけて、かなりの数にのぼり、初めて自治会長や役員になられた方々や募金の自治会費上乗せや強制について常々疑問を持っている方々からのコメントが多くなるのも恒例である。
そんな折、『朝日新聞』が9月から「どうする?自治会・町内会」と題して特集が連載された(9月7日、26日、10月4日、11日、18日、25日)。反響が大きく、読者アンケートや各地域の関係者への取材をもとに構成され、かなりの問題点が浮き彫りにされたのではないかと思う。たんなる「ご近所の底力」的な、行政へのお助け、多くは思い付きの域を出ない、持続性が危ぶまれる自己満足的な活動の礼賛に終わらなかったのがよかった。なかでも、私が注目していたのは、やはり、第3回(10月4日)の中心テーマであった「自治会の会計」であり、「募金の自動徴収」であった。前者では、自治会予算は、前年度踏襲になりがちで、会員の意思が反映しにくい点、後者にあっては、強制募金や自治会費上乗せ、自動徴収などが横行している点を指摘していた。2008年、滋賀県甲賀市希望が丘自治会の住民が各種募金の自治会費上乗せを違法とする最高裁決定(大阪高裁判決2007年8月24日判決)を勝ち取ったにもかかわらず、募金のチラシなどに、小さな字で「寄付は個人の自由な意思によります」などと書き添えたりする程度で、自治体も、自治会を通じての強制募金や会費上乗せ、自動徴収などを見て見ぬふりをし、協力しているのが実態ではないか。
なぜ、改まらないのかといえば、その要因は、募金の主催団体が自治会を集金組織としか考えていない傲慢さと怠慢にあるからだと思う。自治体は、福祉や医療など人道的な活動の一端を担っていることから、自治体行政がそれらに依存したり、補完させたりしている関係があるからでもある。しかし、そこには善意のボランティア精神をないがしろにするように、各団体の運営費、とくに人件費や広報費の割合が高いことはよく指摘される点である。寄付をしても、直接、福祉や医療の現場に届くまでには時間がかかり、目減りが著しいという現実がある。さらに全国組織になると、国の役人の天下り先になったりする現象もある。
ともかく、自分の自治会で、募金の集め方がおかしいぞと思ったり気付いたりした人が、何人か相寄って、異議を申し立てることが、スタートではないかと思う。あわせて、自治体の自治会担当、社協や日赤などから「寄付の任意性」を明言させることが大事なのではないか。
佐倉市では、私たちの自治会では・・・
佐倉市では、前述の自治会長などに配る「手引き」の「自治会との委託契約業務とする日赤の募金の注記に、昨年から次の記述、矢印部分が加わった。しかし、私が昨年参加した説明会では、この件についての口頭での説明は、市からも、募金団体からも一切なかったのも現実である。さらに、前年度の各自治会の寄付金額一覧を配る悪弊が続いていることも確かである。
〇募金などは、個人の自由意思に基づくものです。募金等を自治会費に上乗せして徴収するとした総会議決は無効であるとの判例(*H19.8.24 大阪高等裁判所)もございますので、自治会等におかれましても、募金等の取り扱いについてご配慮いただきますようおねがいいたします。
また、私たちの自治会では、毎年、各募金ごとに、つぎのような募金袋を各班の回覧ルートにのせて回ってくる。ポスティングではなく、必ず手渡しで回し、班長さんに戻る仕組みになって10年余を経た。ともかく、寄付の任意性が維持されてはいる。最近、回ってきた集金袋の表書きである。百均のファスナーのついた透明な袋に入れられているから、かなりの重さ?にも耐えられるだろう。
しかし、自治会が、毎年、地域の自治体連合会に「消防団協力金」(50円×世帯数)、周辺の自治会・商業施設などを中心とする実行委員会形式でのまつりの参加費(700×世帯数)、防犯パトロールなどのNPO法人への協力費が一括で納入されているのも実態である。「消防団」関連への寄付は、消防団員が準公務員であることからや強制募金の性格が強いことから、法廷でも問題になっている。祭りに関しては、現実の参加者数、会場との距離、開発業者主導、参加費の高さなどから、一括納入は問題が多い。さらに「お世話になっているから」と特定のNPO法人のみへの協力金は、拡大への懸念が課題になるだろう。
ああ、問題が多すぎる!まずは、気づいた人からの、自治会、募金団体、自治体へ切り込む力が必要である。