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天皇「生前退位」の行方~天皇制の本質については語られない(2)

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政府の対応

ビデオメッセージ放送の直後、安倍首相は、天皇の国民に向けての発言を重く受けとめ、年齢や公務の負担を考え、どのようなことができるのか、しっかりと考えていかなければいけない、と文書を読み上げた。

菅官房長官は、臨時に記者会見し、公務の在り方について憲法の規定を踏まえたうえで、引き続き、考えていくべきものだという認識と天皇のお言葉が、国政に影響を及ぼすようなご発言ではなく、憲法との関係で問題になるというふうには考えていない、と述べた。

宮内庁の風岡長官は、宮内庁での記者会見で、今後の天皇の在り方について、個人としての心情を憲法上の立場を考えての発言だった。お気持ちが、広く国民に理解されることを願っていると述べた。

天皇の希望する「譲位」が可能なのかどうか、政府筋や各党、「有識者」らの考えるところも伝えられている。現在は、安倍首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の論議、ヒアリングによる意見聴取が続けられている。ヒアリングは、117日(皇室制度分野)、14日(歴史分野)に行われ、あと1130日の憲法の専門家による1回を残すのみとなった(議事録公表はそれぞれ15日、24日)。「有識者会議」の会議名「天皇の公務の負担軽減等に関する」にも象徴されるように、そして任命されたメンバーは、財界人やこれまで各種の審議会委員の常連で「おなじみ」の名が多く、政府からの独立性には疑問を残す。すでに結論ありきで、若干の調整や妥協のもとに、政府の意向である「特例法」に落着させようとする思惑が感じられる。さらに、ヒアリング対象者のメンバーも、その意見の多様性というよりは、かなり偏向したものが予想される。ところが、現在までの議事録要旨、新聞記事などにより「意見聴取の概要」を作成してみると、その結果はかなり微妙である。第3回のヒアリングが今日30日に開催予定である。以下の表は後日補充したい。

これらのヒアリング結果を、有識者会議がどうまとめるかであり、内閣が、その結果をどう受け止めるかである。世論の動向もかなり重要な要素とはなり得るが、いまの安倍内閣では、当初の「特例法」による対応を強行するかもしれない。

 天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議メンバー                        

 

今井 

日本経済団体連合会名誉会長

小幡 純子

上智大学大学院法学研究科教授

清家 

慶應義塾長

御厨  

東京大学名誉教授

宮崎  

千葉商科大学国際教養学部長

山内 昌之 

東京大学名誉教授

 

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koumu_keigen/pdf/sechikonkyo.pdf

 意見聴取の概要 

 

                                                                                                                                               
 

対象者

 
 

肩書

 
 

生前退位

 
 

特例法

 
 

日程

 
 

平川祐弘

 
 

東大名誉教授 比較文化論

 
 

反対

 
 

反対

 
 

1

 

117

 

 
 

古川隆久

 
 

日大教授 近現代史

 
 

容認

 
 

反対

 

(皇室典範)

 
 

保阪正康

 
 

ノンフィクション作家

 
 

賛成

 

 
 

条件付容認

 

(皇室典範)

 
 

大原康男

 
 

國學院大名誉教授 宗教学

 
 

反対

 
 

反対

 
 

所 功

 
 

京都産業大名誉教授

 

日本法制史

 
 

賛成

 
 

条件付容認

 

(皇室典範)

 
 

渡部昇一

 
 

上智大名誉教授

 
 

反対

 
 

反対(摂政)

 
 

2

 

1114

 
 

岩井克己

 
 

ジャーナリスト

 
 

賛成

 
 

反対

 

(皇室典範)

 
 

笠原英彦

 
 

慶応大教授 日本政治史

 
 

反対

 
 

反対

 
 

櫻井よし子

 
 

ジャーナリスト

 
 

反対

 
 

反対(摂政)

 
 

石原信雄

 
 

元官房副長官

 
 

賛成

 
 

容認

 
 

今谷明

 
 

帝京大名誉教授日本中世史

 
 

反対

 
 

反対

 
 

大石 真

 
 

京大教授 憲法 

 
 

賛成

 
 

反対

 

(皇室典範)

 
 

3

 

1130

 
 

園部逸夫

 
 

元最高裁判事

 
 

賛成

 
 

賛成

 
 

高橋和之

 
 

東大名誉教授 憲法

 
 

賛成

 
 

賛成

 
 

百地 章

 
 

国士舘大客員教授 憲法

 
 

賛成

 
 

賛成

 
 

八木秀次

 
 

麗澤大教授 憲法 

 
 

反対 

 
 

反対 

 

 

1130日については、121日の新聞記事に拠り、補記した(123日)。

 

 

政府の対応

ビデオメッセージ放送の直後、安倍首相は、天皇の国民に向けての発言を重く受けとめ、年齢や公務の負担を考え、どのようなことができるのか、しっかりと考えていかなければいけない、と文書を読み上げた。

菅官房長官は、臨時に記者会見し、公務の在り方について憲法の規定を踏まえたうえで、引き続き、考えていくべきものだという認識と天皇のお言葉が、国政に影響を及ぼすようなご発言ではなく、憲法との関係で問題になるというふうには考えていない、と述べた。

宮内庁の風岡長官は、宮内庁での記者会見で、今後の天皇の在り方について、個人としての心情を憲法上の立場を考えての発言だった。お気持ちが、広く国民に理解されることを願っていると述べた。

天皇の希望する「譲位」が可能なのかどうか、政府筋や各党、「有識者」らの考えるところも伝えられている。現在は、安倍首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の論議、ヒアリングによる意見聴取が続けられている。ヒアリングは、117日(皇室制度分野)、14日(歴史分野)に行われ、あと1130日の憲法の専門家による1回を残すのみとなった(議事録公表はそれぞれ15日、24日)。「有識者会議」の会議名「天皇の公務の負担軽減等に関する」にも象徴されるように、そして任命されたメンバーは、財界人やこれまで各種の審議会委員の常連で「おなじみ」の名が多く、政府からの独立性には疑問を残す。すでに結論ありきで、若干の調整や妥協のもとに、政府の意向である「特例法」に落着させようとする思惑が感じられる。さらに、ヒアリング対象者のメンバーも、その意見の多様性というよりは、かなり偏向したものが予想される。ところが、現在までの議事録要旨、新聞記事などにより「意見聴取の概要」を作成してみると、その結果はかなり微妙である。第3回のヒアリングが今日30日に開催予定である。以下の表は後日補充したい。

これらのヒアリング結果を、有識者会議がどうまとめるかであり、内閣が、その結果をどう受け止めるかである。世論の動向もかなり重要な要素とはなり得るが、いまの安倍内閣では、当初の「特例法」による対応を強行するかもしれない。

 天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議メンバー                                  

 

今井 

日本経済団体連合会名誉会長

小幡 純子

上智大学大学院法学研究科教授

清家 

慶應義塾長

御厨  

東京大学名誉教授

宮崎  

千葉商科大学国際教養学部長

山内 昌之 

東京大学名誉教授

 

政治の怠慢とは

 数紙の社説でも指摘のあった「政治の怠慢」とは具体的に、以下のような経過を指している。すなわち、小泉内閣の際に設置された有識者会議では、女性・女系天皇容認の報告書が提出したが、20069月に秋篠宮家に長男が誕生、皇室典範の改正が見送られた。また、野田内閣の際には、皇室制度に関する有識者へのヒアリングの結果、女性皇族の結婚後も皇室にとどまることができるとする論点整理が公表された。その後、何らの進展を見ておらず、今回に至ったことになる。また肝心なことは、先送りにされ、現天皇一代限りの特例法で突破するのだろうか。

 

最近の皇室関係有識者会議

  

 

小泉内閣

 
 

野田内閣

 
 

安倍内閣

 

論点

 
 

皇位継承の安定維持

 
 

皇族現象への対応

 
 

生前退位への対応

 
 

会議名

 
 

皇室典範に関する

 

有識者会議

 
 

皇室制度に関する有識者

 

ヒアリング

 
 

天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議

 
 

期間

 
 

20051月~10か月

 

17

 
 

20122月~7か月

 

6

 
 

201610月~

 

11月ヒアリング3

 
 

報告書

 
 

200511

 

女性・女系天皇容認

 
 

201210

 

女性宮家創設を含む論点整理

 
 

20171月論点

 

整理?

 

 

(参考)

皇室典範に関する有識者会議報告書(20051124日)

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/houkoku/houkoku.html 

 

国民はどう受け止めたか

では、国民は、どう受け止めたのだろうか。当然、メディアの社説や報道による情報操作が多分に反映されてはいるが、いくつかの世論調査結果を見てみよう。設問やの選択肢が異なるので、比較や推移を見るのは簡単ではないが、一つの目安とはなるだろう。

これらの数字を見る限りでは、今後の天皇を含めて、「生前退位」を認めたいとするのは6割から9割にもおよび、そのためには、現天皇に限らず、制度・法律の制定を望むという世論は根強く、、6割から7割を占めることが分かる。政府は、この民意をどう反映するのか、が課題となった。

 

日本経済新聞2016725日発表)

 生前退位表明は憲法上問題ない   80

  〃       問題ある   11

わからない、その他        9

 今後の天皇にすべてに認める制度を 65

現天皇一代限りの制度を      12

現行まま、摂政を         15

わからない、その他            8

 NHK82628日実施、95日公表)
* 生前退位認めた方がよい    84.4% ⇒
  生前退位認めない方がよい    5.2
  わからない          10.4

*⇒皇室典範を改正による     70.3

特別法による         24.5%  

わからない、その他   5.2%

出典:生前退位に関する世論調査2016826日~28日実施(NHK放送文化研究所)

file:///C:/Users/Owner/Desktop/生前退位/20160905_1.pdf

 日本経済新聞20161030日発表)
 生前退位を認める          63%⇒
〃 認めず摂政を置く          13
国事行為を委任する           11

*⇒皇室典範の改正による       61
  一代限りの特例法による      23
  その他              16%

東京新聞20161120日発表)

 生前退位をできるようにした方がよい 89.3

現行制度のままでよい        8.6

わからない・無回答         2.1

 生前退位の法整備は特例法でよい   25.9

〃今後すべての天皇を対象に    69.9

 わからない・無回答         4.2

(参考)
平成の皇室観 ~「即位 20年 皇室に関する意識調査」から~
放送研究と調査2010https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2010_02/100202.pdf


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