この日の懇話会では~順天堂、山万にとって、なんともムシのいい話では?
傍聴した懇話会は、つぎのようなメンバーで、すでに、第1回5月23日、第2回7月25日と開催されている。懇話会設置の目的について、市長は、順天堂から大学のスポーツ健康科学部の新キャンパス構想案の提案を受け、同時に大学施設建設への財政支援を要請されたので、その公的支出の在り方について有識者の意見をいただきたい旨、述べている。年内に5回ほど開催して、報告書作成の段取りらしい。この間、市が行った市民の誘致に関する意識調査と他の自治体における誘致事例調査、シンクタンクによる大学誘致の経済効果などの結果を踏まえての議論が進んでいる。第3回は、主に経済効果調査の報告を中心に意見交換がなされた。私は初めての傍聴だったが、傍聴者は11人、これまでで一番多いとか、山万関係者1名、市民8名、議員2名であった。
この日の懇話会でも、委員から疑問が出ていたが、その性格がスタート当初から不明確なのだ。1・2回の議事録を読んでみると、懇話会の事前に、事務局から、一般的に大学誘致に伴う公的支出の在り方を論じてもらうのであって、特定の大学名、すなわち順天堂大学という個別の話はしないようにというの指示があったらしい。委員たちは、それでは検討が難しいと言えば、「個別の話にのみに特化するのではなく、大学誘致をそもそもどう考えるのかについてご議論いただきたいとの趣旨であった。その中で、個別の話を出していただくのは構わない」(?!)と事務局は応えている(第1回議事録より)。分かったよう分からないような答弁。市民のアンケート調査にしても回収率が悪く、どう見ても質問や選択肢が悪いし、誘導的であった。期待できる効果を問うたものにしても、人口増加、雇用拡大、昼間人口増による賑わい、社会貢献、消費による経済効果など、その回答には突出したものはなく、ばらけていていずれもパーセントは低く、20%前後だ。他の自治体の大学誘致の事例、佐倉市と同規模自治体の同程度規模の大学誘致の事例も報告されているが、それは様々で、誘致の経過、公的支出の割合、誘致によるメリット、デメリット・・・、誘致効果など簡単に計れるものではないだろう。街は賑やかになったか、若者の人口が増えたか・・・、担当者に面談か電話かをする調査もしていたらしいが、これとて参考のデータになるのだろうか。経済効果にいたっては、具体的な条件が定まらずして、調査ができたのだろうか。この調査業務は200万で千葉銀行の研究所が落札したという。委員には、詳細な資料が配られているのか否か、傍聴人に配られた簡単な資料も退室時には回収されてしまった。その資料によれば、順天堂大学側の提案の一部が表になっていて、山万からの3000坪無償貸与を前提に、学生が4学年870名、教職員60名の規模、教室・研究室・図書館と600人収容の講堂、バスケットコート2面を含む施設の総費用48億5000万円、その半分を佐倉市が負担せよ、容積率も変更せよ、というものだった。ひとことで言えば、大学にとっても、ユーカリが丘駅北口再開発を進める山万にとっても、なんと“虫のいい”話ではないか。市民の税金25億近くを出させようとは。
委員同士、担当の企画政策課とのやり取りを聞いていても、環境経済学、行政法専攻の教授たち、弁護士、葛飾区で理科大誘致にかかわった元担当者、シンクタンクの研究員たちの質問や意見は専門的とは言い難く、感想や思い付きの座談めいて、それはゆるいものだった。なかには、委員同士のエール交換だったり、委員が市担当者の調査をねぎらうものであったりと、実がない。いったいどんな報告書を出そうというのだろうか。 あと2回の懇話会に何が期待できようか。
たしかに市のスタンスは曖昧なのだが、委員は市が何をしたいのかを明確にしない以上はとお茶を濁さず、山万や市議たちの外圧に惑わされることなく、「御用」ではない第三者の専門家としての知見を発揮してほしい。
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任期:平成26年5月~平成27年3月 佐倉市大学等の誘致に関する懇話会委員名簿 | ||
氏名 | 経歴等 | 備考 |
有村 俊秀 | 早稲田大学政治経済学術院教授 | |
淡路 睦 | 株式会社ちばぎん総合研究所主任研究員 | |
下井 康史 | 千葉大学大学院専門法務研究科教授 | 副会長 |
山崎 喜久雄 | 元葛飾区教育委員会教育長 | |
湯川 芳朗 | 弁護士 | 会長 |
そもそも、どこから出た話なのか
佐倉市の大学誘致の話は、わが家が転居してきたころだから、平成に入って、菊間、渡貫市長時代から、ちらほら聞かないではなかった。企業誘致と合わせての市の振興策の一環として、市議会でやりとりされている。渡貫市長は、市の側から積極的に大学誘致をするということは、財政負担が生ずることになるので慎重にならざるを得ないという姿勢であった。
蕨市長(2007年4月~)時代に入って、2011年末の市議会から、順天堂という大学名を伴って、一部会派の議員たちが、盛んに市長に質問し始めている。市長は、佐倉市への大学進出は街の活性化に寄与するが具体的な話は一切届いていない、大学が誘致されても免税されるので税増収にはつながらないので企業誘致の方を優先したい旨の答弁をしていた。2012年になると、さらに質問は執拗になり、市長は具体的な話があれば、手伝いはさせてもらうが、佐倉市には多額の財政支援を行う余力はない、としていた。2012年12月17日「大学誘致に関する意見書」がさくら会、公明党などにより市議会に発議され、28人中22名の賛成で議決されている。それは、佐倉市の生産年齢人口の急減が憂慮され「佐倉市の人口減少と少子高齢化への対応と高等教育環境の整備、経済振興の活性化と品格ある佐倉市に期するため」順天堂大学を佐倉市に誘致するよう要請するものであった。
2013年の11月議会において、11月19日、順天堂の理事長から佐倉市長に、山万からユーカリが丘駅北口に3000坪の土地の無償提供を受けること、容積率の緩和をすることなどを条件に、スポーツ健康科学部の新キャンパスを開設したい旨の正式な表明がなされたこと。市長は、多額の支援は困難であること、市民の理解が得られること、早く具体案を示してほしいことの3点を伝えたことが、議会の質疑で明らかになった(12月3日。なお、11月28日に理事長からの正式文書が届いている)。山万の広報誌「わがまち」12月号は待ってましたとばかりに「順天堂大学の誘致がいよいよ始動します!」と伝えた。
ところが、ここに至るまでには、山万の相変わらずの強引な、地元無視の手法が展開されていたのだ。毎年、秋に開催されるユーカリが丘自治会協議会と市長との懇談会に向けて、各自治会から提出された要望事項というのがある。2013年11月9日に、地元のユーカリが丘3丁目自治会は、当該の3000坪を含む「ユーカリが丘駅北土地区画整理事業について」、とにかく、怒って、つぎのような経緯と要望を提出している。その主旨は、2013年7月6日、「ユーカリが丘駅北土地区画整理事業組合準備会」(山万ほか地権者)*による地元周辺住民への説明会が開催されたが、そこでは事業計画の内容ではなく、事業計画に記載されていない「大学の立地について」の説明に終始した。そこで、佐倉市に問い合わせたところ「2013年4月、市は、準備会から「基本計画協議書」が提出された以降、協議を進め、周辺住民への影響を考慮して基本計画の内容を十分説明した上で合意形成を計るよう助言を繰り返していた。市として順天堂大学に確認したところ、当区画整理事業区域内に進出する意思はないとのことである」との回答(8月2日)を貰ったが、さらに、準備会、実質的な事業計画者、山万への指導を強化するよう要望していたのだ。さらに、地元では、大学誘致による用途地域変更についてはもちろん、ユーカリが丘3丁目の地区計画制定者の一員でもあることから、周辺住民との協議をするよう、市の強力な指導を要望していたのである。なお、これらの要望については、同年12月27日付で、ほぼ同上8月2日付回答と同旨で、加えて市と準備会との協議が中断しているとのことも明らかになった。
*<参考>千葉県における土地区画整理事業の手引き:
http://www.pref.chiba.lg.jp/tosei/shigaichiseibi/kumiai/tejun.html
この経過を見ると、地元自治会の山万への不信感は募るばかりだろう。しかし、市からの回答も、12月27日付にしては、もっぱら準備会と地元自治会との問題に限定したもので、上記、市議会での質疑や市長の答弁がまるっきり反映されていないわけだから、市への不信感もいかばかりかと思う。そのさなかでの、「わがまち」のトップ記事だったわけである。(つづく)