このブログの10月20日の記事では、「公表された議事録作成の経緯の検証と当該議事録の撤回を求める申し入れ」賛同署名について紹介しましたが、10月27日に締切りました。
(2015年10月20日の記事)
「公表された議事録作成の経緯の検証と当該議事録の撤回を求める申し入れ」賛同署名が始まりました。10月27日まで。
昨10月28日に、3200名弱の署名とメッセージは、参議院山崎議長、安保法制特別委員会鴻池委員長、参議院中村事務総長の三者に届けられました。私は、その報告会に記者たちともに参加しました。前回の「安保関連法案の採決不存在の確認と法案審議の再開を求める申し入れ」と署名は、以下の当ブログ記事にもあるように、5日間で集まった32100名余の署名と共に山崎議長と鴻池委員長に申入れをしました。鴻池委員長は、申入れは受理したものの署名簿は受け取らないという態度をとりました。
(2015年9月26日 の記事)
9月25日「安保関連法案の採決不存在の確認と法案審議の再開を求める申し入れ」賛同署名提出!
しかし、今回は、鴻池委員長も、申入れと共に署名簿(メッセージつき)を受理したそうです。10月11日の参議院のホームページに公表されたのは9月17日の安保法制特別委速記録にはなかった「右両案の質疑を終局した後、いずれも可決すべきものと決定した。なお、両案について付帯決議を行った。」という追記がなされ、「参照」として横浜での地方公聴会速記録も追加されたことが問題の核心なわけです。「議場騒然」「聴取不能」の中で、上記の追記がなされた経緯の検証において、申入れをした呼び掛け人の醍醐・藤田両氏の報告によれば、上記の追加について確認されたことは、一部報道の通り鴻池委員長の権限でなされたということが、参議院の議長・事務総長サイドの認識であるが、鴻池委員長の判断が国会法、参議院規則などに違反していないか、そのチェックはしないのかの質問には、明確な回答が得られていないままだったそうです。
なお、今回の報告会には、さきの3万2000名署名の報告会にも参加された弁護士会有志代表の武井由起子弁護士も参加しました。武井氏は、速記の日でもある10月28日を期し、弁護士82名による<参議院「安保特別委員会」の議決の不存在を再度確認し、委員会会議録の虚偽記載を非難する弁護士有志声明>を発表しました。多くの国民は「通ったものはしょうがない」くらいの気持ちかも知れないが、憲法、法律、規則、先例のいずれにも反する、今回の「採決」は、立法府における重大な法令違反があり、「採決不存在」が明白であることをもっと強く認識し、抗議をしないと、今後の重大な悪しき先例になると、警鐘を鳴らしていました。
その詳細な分析のすべてを紹介できませんが、その一部を要約すると以下の通りです。
①参議院規則は本会議のみならず委員会にも準用されるが、136条1項は、「議長は、評決を採ろうとするときは、評決に付する問題を宣告する」とし、参議院委員会先例録155条には「委員長は、問題を可とするものを挙手又は起立させ、挙手又は起立者の多数を認定」とある。「問題の宣告」も委員の意思表明の対象も特定できなかったことは速記録においても映像記録においても確認できていないのだから議決自体が「不存在」である。
②参議院規則156条では、「すべての議事は速記法によらなければならない」となっており、録音などによる方法はとらず、衆議院に比べてもきわめて厳格な逐語性を追求している。
③参議院規則157条は、会議録の訂正は、字句に限られ、発言の趣旨変更できないことを定める。
④参議院委員会先例録300条には、速記法による以外の掲載例として、極めて形式的な事項が列記された末尾に「(11)その他委員会又は委員長が必要と認めた事項」とある。本件追加部分は、議事の審議や票決という実質的な部分にかかるものであって、これには当たらない。
⑤憲法57条第1項両議院会議の公開、第2項会議の記録・保存・公開・頒布の原則が定められている。第2項は、会議録は起こった事実を記載するものであるから、存在しなかった事実を記載した場合は虚偽記載となる。代表民主制にあっては、すべての国民が参加したり、傍聴したりできないことを担保するために、会議録を残すのであって、国会に正当性を与える重要なものである。虚偽の会議録は公開原則に違反する。
弁護士有志の声明では、「速記は言葉の写真」、速記者は「議院の耳」という言葉を引用し、「速記法による記録」は、高い専門性と倫理観が問われている速記者による記録でなければならない、とも述べています。
以上は、採決の不存在、議事録の撤回を求める法的な論拠であるが、今回の賛同署名に寄せられたメッセージの数々を読んでいると、あの特別委員会の騒乱の様相を国会中継で見てしまった国民の多くは、「許せない」、と同時に「許したら民主主義がダメになる」との悲痛な声が聞こえるようでした。< 賛同者の住所(県・市町村)とメッセージがご覧になれます>
なお、今回の申し入れと賛同署名の提出先である鴻池委員長は、「Will」という月刊雑誌の12月号で「参院委員長が初めて明かす 安保国会 大混乱の舞台裏」と題して、いわば得意げに、委員長の権限は絶大で、議事の進行も、議事録の追記も、すべて「委員長の議事整理権」の範囲内で行っていると主張しています。しかし、あの国会中継を見てしまった多くの国民を納得させるものではありません。