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ことしのクリスマス・イブは(3)~なんといっても、サプライズは、国会開会式出席表明の共産党だった!(その2)

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中央委員会に問い合わせると

1225日、赤旗の記者会見の記事について、中央委員会に電話をかけてみた。どういうわけか、担当に代わりますと言って、赤旗編集局政治部の人が出てきた。赤旗記事と綱領の部分を見ながらのやり取りとなった。やはり上記「綱領」と今回の対応の表明との齟齬についての素朴な質問なのですが、と切り出した。

 

Q 「お言葉」の内容が儀礼的・形式的となり、憲法の条項と精神からの逸脱が見られないので、出席することにし、一方で、天皇のための「玉座」から「お言葉を賜る」形式は、憲法の主権在民の原則と精神に反していることは明らかで、「表明」でも指摘していながら、なぜ出席することに転換したのかの理由がわからない。

A 出席をして、抜本的な改革を求めることが必要だということだ。

Q 新憲法下での議会が始まって70年近く経ているのだが、この間、共産党は、憲法の精神・原則にのっとって、たとえば、「玉座」について、具体的な抜本的な改革を、国民に対して、あるいは議会内で提案したことがあったか。

A 私の記憶では、ありません。

Q 「私の記憶」ではなくて、党として提案した事実はあったのか。

A なかったと思う。

Q 「綱領」では、「現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ」と言っていながら、「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである」としている。「その存廃」をいつ来るかもしれない「情勢が熟したとき」の国民の総意にゆだねるという意味だと思うが、「情勢が熟したとき」とはどういう状況をいうのか。

A 国民の間で現制度の廃止という気運が高まってきたときだ。

Q 「綱領」文脈から言えば、将来に向けて、「象徴天皇制」を改正ないし廃止すべきという具体的な提案がなされ、それへの努力という方向性が示されるべきだと思うが。

 A 情勢が熟したときは、廃止の主張をするはずだ。

 Q では、今の情勢を変えるような、情勢が熟すような提案や政策を掲げ、国民に対して、あるいは議会内で働きかけをしたことがあるか。

 A 現在は、現憲法の基本である平和憲法を守ることを最優先して、活動することが大切だ。

 

これはあくまで要約で、電話での答えは、記事にある「表明」文言、質疑の「回答」文言、「綱領」の文言を繰り返し、記事以上の説明はできないというのだ。当方も、「綱領」を読みあげてみるが、「表明」との齟齬についての疑問は疑問のままだった。そんなこともあって、私の方は、もう一つの大事な質問を忘れてしまっていることに気が付いた。「記者との一問一答」記事の冒頭で、開会式の改革を実現する上でも出席することが積極的対応になるのか、を問われて、志位委員長はつぎのように答えている。

 

 「欠席という態度を続けた場合には、わが党が天皇制反対という立場で欠席しているとの、いらぬ誤解を招き、憲法の原則と条項を厳格に順守するために、改革を提起しているという真意が伝わりにくいという問題があります。その点で、出席した場合には、そうした誤解を招くことなく、憲法順守のための改革を提起しているという真意がストレートに伝わることになると考えました」

 

 この「真意」が、ますます分からなくなってしまう。先の「綱領」では、現在の「一人の個人が世襲で『国民統合』の象徴となるという現制度」すなわち「象徴天皇制」は、「民主主義および人間の平等の原則と両立するものではない」と言っているのにもかかわらず、「天皇制反対という誤解を招く」ということは、「天皇制には反対していない」ということを言いたかったのか。となると、先の「綱領」の文言との齟齬はどうなるのか。誰かこの疑問を解いてほしい、と思って、ひとまずネット検索してみると、次のブログに行き当たった。しかし、2004年の「綱領」を国語的に読む限り、現憲法下の「天皇の制度」を肯定はしているとは読めない。かりに、「綱領」の[憲法と民主主義の分野で](四.民主主義革命と民主連合政府⇒(一二)現在、日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容)のトップで、「現行憲法の前文をふくむ全条項(ぜんじようこう)をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」とうたっていることと「天皇制反対」が矛盾していることとも思われない。<「天皇制反対」はしない>というならば、先の「綱領」で<象徴天皇制が民主主義と平等原則と両立しない>としていること、との矛盾の方が重大なのではないかと思う。

長春だより(大田英昭のブログ)http://datyz.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25
日本共産党と天皇制――国会開会式への出席をめぐって 
[日本・近代史]
こうした天皇制に対する共産党の公式見解に大きな変更が加えられたのは2003年、第7回中央委員会総会における党綱領改定案についての不破哲三議長による提案報告および党創立81周年記念講演会での同氏の講演においてであった。ここで不破氏は、主権在民の原則が明確な現行憲法下の日本は君主制国家ではないと断言し、戦前の「絶対主義的天皇制」からの断絶をいっそう強調した。こうした認識のもと、当面は「天皇制と共存」すべきことを同氏は明らかにしたのである。なお同氏は上記講演で、「このことを見て、『共産党はいままでがんばってきた旗をおろして現実に妥協しすぎるんじゃないか』、こう心配する声も聞かれ」るが、それは「誤解」だと弁明している。
 このような方針転換によって、共産党の2004年綱領では、天皇制を「ブルジョア君主制の一種」とするかつての文言が削除され、「民主主義革命」を経て樹立される「民主連合政府」においても「現行憲法の前文をふくむ全条項」がまもられる、すなわち天皇制が維持されるという方針を明確にした。

 

 

  そこで、ふたたび、中央委員会に電話をして、中央委員会であることを確かめて、質問をした。
 

Q「天皇制反対という誤解を招く」ということは、「天皇制には反対していない」ということを言いたかったのか。

 A そうですよ、共産党は天皇制に反対していない。

 Q でも、「綱領」では、明らかに「象徴天皇制」は民主主義や平等原則と両立しない、と言ってますよね。その象徴天皇制には反対はしないのですか。

 A 共産党は、現行憲法で、できることとできないことを明確に分けて考えている。象徴天皇制が、憲法に違反しているとは言っていない。あなたはごっちゃにしているので、よく私の話を聞いて!わが党は、憲法を守るのがすべての前提だ。憲法を守らないでいいのか。「一問一答」でも、「日本の将来の発展方向として・・・」

 

 と、「綱領」後半を読み上げるばかりである。きょうの電話の相手は、若い声だけあって、ばかに高姿勢なのが気になる。「中央委員会の政治部なんですね」と確認すると、「中央委員会に<政治部>なんてない、あなたは勘違いしている」「それではなんという部局?」と聞けば「国民の声」係だそうだ。

 

Q 「綱領」で「象徴天皇制」がおかしい、と明言しながら、いつ来るかわからない「情勢が熟したとき」に憲法を改正するかどうかを国民に問うということか。

A 今の状況では、そんな情勢になるときは、まず当分は来ない。多くの国民が天皇制の廃止などを言っていないに、 天皇制の廃止を言い出したら、国民の総意を軽んじることになると、2004年のフワはいっている。

Q フワ?(不破らしい)。共産党が目指すところがあるのならば、それに沿って、議会や国民に働きかけて、気運をつくるのが政党ではないか。これまで、どういう活動を、国民に対してや議会内でしてきたか。

A 今回の表明だって、こんな問題があるのだと、国民に注意喚起ができたことはよかったじゃないか。国民の大多数は、「玉座からのお言葉」についてだって、関心がないどころか「あれでイイじゃん」というレベルでしょ。

Q レベルって、なんか見下した感じですね。

A 「レベル」で悪ければ、「段階」と言い直しますよ。国民はいまの段階で、天皇制を廃止しようなんて考える人はどの世論調査でも少数だ。

Q 世論の多数に従うというだけでは、政党ではないですよね。同じ様な考えを持つ人を増やしていくのがその働きでしょ。

A いまは、憲法に違反する戦争法を廃止することが最大の問題で、天皇制の問題は、現在の課題ではない。あなたは理解したくないだけだ。

 

 ということで、「なかなか理解は、難しいですよ」と電話を切った。ほんとに、外から見ていると、やはり謎が多い政党だな、と思う。そもそも政治集団なんてそんなものだと言われてみればそれまでだが、これまで、反権力と闘ってきた人々を支援する党でもあったわけだから、オープンで、明確な文言で、発信してもらいたいと思うのだ。ところが、最近とみに、おかしいぞと思っている矢先に、今回の「表明」であった。

 そして、サプライズは、さらに続いたのだ。(続く)

 


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